ニドラン♂徹底解説
ツノのあるウサギ
デザインの出発点は、ウサギ目の動物とげっ歯類を掛け合わせたものだ。長い耳、大きな切歯、4本足のコンパクトな体。ウサギらしくないトゲと毒腺は、実在する数少ない有毒哺乳類から借りている。よく挙げられる神話上のモチーフは、アラブの伝承に登場する一本角のウサギ、アル=ミラージュ。そしてもう1本、月につながる糸もある。この一族は最終進化に つきのいし を使うため、東アジアの民話に登場する月のウサギと結びつく。
名前は日本語、英語、スペイン語で同じ。ニドラン♂ はそのまま音写され、どのローカライズでも変更されなかった。カントーのポケモンでは珍しいことだ。語源は決着しておらず、英語の needle(針)と、日本語の二度(nido、「2回」)が候補に挙がっている。後者なら、この種族が2つに分かれていることとも符合する。
性別ごとに1種族
ニドラン♂ と ニドラン♀ は同じポケモンの2つの姿でも、同じ生き物のオスとメスでもない。図鑑の別々のエントリーで、それぞれ固有の数値を持ち、進化先も別のポケモンになる。デザインされた当時は、性別そのものがまだゲームのシステムに存在しなかった。性別が登場したのは第2世代なので、♂と♀の記号は名前の一部でしかなかった。対になるメスと比べると、オスは攻撃と素早さに数値を寄せ、そのぶんHPと防御を削っている。メスはより耐えて、攻撃力は低い。
ニドリーナ と ニドクイン がタマゴを作れないことは、ゲームで繰り返し語られる変わり種のひとつだ。理由は明快で、進化前はタマゴを作れるのに、進化後は作れない唯一のポケモンだから。メタモン と組み合わせても無理だ。アニメはこの設定を、特別編『ポケットモンスター ミュウツー!我ハココニ在リ』で何食わぬ顔で覆した。クローンの ニドクイン が、平然とタマゴを産んでいる。
変わり続けてきたところ
第1世代には特殊というひとつの能力値しかなく、ニドラン♂ は40だった。第2世代でそれが特攻と特防に分かれたとき、2つの数値は同じになり、それ以来ずっと変わっていない。特性は段階的に追加された。登場時から どくのトゲ を持ち、第4世代で とうそうしん が加わり、第5世代から隠れ特性として はりきり が追加された。これが、対戦で唯一の存在理由を与えた特性だ。
『ポケットモンスター 赤・緑』では、トキワシティ から セキエイ高原 へ向かう 22ばんどうろ で捕まえられ、サファリゾーン にも出現する。カントーのトレーナーが序盤で捕まえられる、最初期のどくタイプのひとつで、かなり長いあいだ唯一の存在でもある。
進化させるか、待つか
進化させずに残しておく誘惑には、ちゃんとした根拠がある。ニドラン♂ のレベルアップ技は、ニドリーノ より数レベル早く習得できる。レベル20で どくびし、レベル25で にどげり、レベル30で つのでつく、レベル35で てだすけ、レベル40で どくどく。どれも進化するレベル16よりあとに設定されているため、どくびし をできるだけ早く使いたいなら、Bボタンを押す理由にはなる。
ただ、その理由はすぐに尽きる。レベル差は2、3程度で、ニドリーノ は全体の能力値が十分に上がるため、待つことで得るものより失うもののほうが多い。なにより、どちらも終着点ではない。このラインは ニドキング にたどり着くために存在し、つきのいし を使う前に覚えるものはすべて通過点の材料だ。第1進化段階でレベル50に覚える どくづき は、ほとんど誰も本来の場所では見ることがない。そこまで進めば、すでに石を使っているからだ。